アーカイブ : 2011年 8月 8日

パワーを与えてくれるものは、大切にしたい。

「こっちが、営業で必死に頑張ってるのに、悠長なものだな」
「金食い虫は、会社にとっては有害以外何者でもない」・・・

僕が25歳の時・・・今から何年前なんて、計算したく無いような、
その昔、僕に投げかけられた言葉だ。

当時、僕は、紀文の総務部付きで、
東京大学応用微生物研究所へ国内留学で派遣されていた。
これが、僕のバイオ研究者としての道を決定した。

派遣されて、1年も経っていなかった、冬の寒い夜。
当時の本部長であったS氏に夕食に誘われた。
新入りに近い僕にとっては、遙か彼方の地位にいる方からの誘いで、
妙に緊張したのを覚えている。
夕食の場所は、紀文グループが当時経営していた銀座のお寿司屋さんだ。
すべてが初めてのことだった。

冒頭に紹介した言葉は、この時、たまたま、カウンターに並んだ、
W営業部長が発した言葉だ。

「君かあ、東大に留学しているのは・・、何を今やっているの?」
そんな言葉でやり取りは始まった。
S氏とW氏は、同僚に近い関係だったのだろう。
その気安さからか、営業の最前線にいたW氏からは、
国内留学そのもの、研究開発そのもの・・・
などに批判的な発言が続いたのだった。

そうこうしているうちに、酔いも回ったのか、冒頭の発言が・・・。

僕は、悔しくて悔しくて、でも反論も出来なくて、カウンターで思わず涙してしまった。
S氏、カウンターの中の職人さんに慰められながら、その場を後にした。

W氏はその後、国際部長や海外子会社の社長を歴任して、出世街道をまっしぐら。
おそらく、W氏は、僕のことなど、覚えていなかったかも知れないが、
僕は、あの時の悔しさを胸に、頑張った・・・なんとしても、実績を残そうと。

W氏を見返したい!
営業部門から研究開発を見る目を変えさせたい!

・・・結局、2001年に紀文を退職するまでに、
それが、できたかどうかはわからないが、
W氏のあの言葉があったから、
約20年の紀文での研究生活が送れたのかも知れない。
W氏のあの言葉があったから、
底知れぬパワーが出たのかも知れない。

1週間前のこと・・・、紀文の退職者の集まりである、社友会から、
W氏の訃報を告げるFAXが流れてきた。
時代は巡る・・・、これからは、W氏が遠い空の彼方から、
厳しい言葉を投げかけてくれていることを信じて、
それをパワーにして頑張っていこうと思う。