アーカイブ : 2012年 1月 31日

いつもなら、必ずその雄姿をカメラに収めたくなるのに・・

世田谷の実家から約2㎞のところに、駒沢オリンピック公園がある。

そのすぐ隣にある病院に伏せている母が毎朝散歩で往復していた公園で、
散歩仲間やらホームレスの方やらと仲良くなっていたらしい。
良く、ゆで卵とかお菓子とかを、ホームレスの方々に差し入れして、
そのお返しとして、公園に落ちる銀杏を大量にもらってきたりしていた。

病棟のエレベーターホールから、駒沢オリンピック公園の記念塔越しに、
晴れた日には、富士山がよく見える。

エレベーターホールからナースステーションや病室に向かう全てのヒトの目に、
大きなガラス窓越しに、必ず、その雄姿が目に飛び込んでくる。
良く、その富士山をカメラに収めようと、ちょっとした人だかりになることもある。

富士山は何も語らず、その雄姿を見せてくれるが、
見る側の心のあり方は様々なのだろう。

治る希望の持てるヒト、
絶望の淵に立っているヒト、
人の命を救う使命に燃えるヒト、
病院内を清潔に保ってくれるヒト、
希望を持って見舞いが出来るヒト、
深い悲しみを患者本人に見せずに励ましながら見舞いをするヒト

・・・・・様々な思いを胸にしながら、目に飛び込んでくる富士山は、
それぞれの人たちを常に優しく包み込んでくれているような気がする。

最初で最後の孝行を、出来る限りしたいと、
病室に通っている僕にも毎日毎日、行く度に、
富士山は僕を励ましてくれている
・・・その励ましに感謝しつつも、その雄姿をカメラに収める気にはなれない・・・。